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1969 シェベルワゴン快適街乗り仕様製作レポート

渋滞を気にせず日頃の足として使えるヒストリックカーを。
60~70年代のアメ車って、全てがコンピューターを使って「効率」を最優先に設計された現代車には無い、なにか人の温もりを感じさせる暖かさがあっていいですよね。 車=移動手段という単純な公式では説明できない、何か特別な思い入れを感じているファンも多いことでしょう。
しかし、これらの車を日常の足として現代の交通環境の中で快適に使えるか?と聞かれると....???となってしまうかもしれません。
ここにご紹介する車は、都内在住のオーナーが日常の足として使用することを目的に製作された、街乗り快適仕様の製作レポートです。
オーダーの内容は、ベース車は68~72までのシェベルワゴンでAT、A/C、パワステ、パワーブレーキ装備、 また、都内在住なので渋滞等に気を遣うことなく、足として快適に使用出来ること、 首都高をよく利用するので、直進性、レーンチェンジ等に気を遣う必要が無いようにしっかりとしたハンドリングにして欲しいということでした。
ということでスタートしたわけですが、まずベースとなる車を探さなければいけません。 
出来るだけ程度の良い物が理想ですが、生産されてからすでに30年近く経過しているわけですから、全てにおいて良好というのは難しくなってきます。
エンジン関係はいくらでも部品が手に入りますので、あとあと直すのに手間の掛かるシャシー&ボディ関係のコンディションが、 出来るだけ良い車を探しました。幸いにも日本国内で錆びも少ないそこそこのコンディションの69年式が見つかりましたので、それをベースにプロジェクト開始です。
その時点でのスペックは、350エンジン、2速AT、A/C、パワステ付、ブレーキは前後サーボ無しのドラムでした。
ブレーキ
まず着手したのがブレーキです。
2トン近い車重に、交通量の多い都内+首都高をノンサーボのドラムブレーキでは、自殺行為?とまではいかなくても、 かなり神経を遣って乗るようになってしまうため、フロントをサーボ付きで、踏力に対して安定した制動力を得られるディスクブレーキに換装することにしました。
モデルに関してはWilwood HD4ポッドも考えましたが、純正タイプの方がパッド面積が大きいため、初期制動を含めて効きそのものは優れています。
効き始めから最終的に停車するまでのコントロール性はWilwoodの方が、4ポッドということもあって良いのですが、スポーツ走行をするわけではないので、 街中での使いやすさを考慮して、純正タイプを使用することにしました。
ちなみに、カマロなど1.5トン以上車重が有る車にWilwoodを使う場合、GT Heavy Duty以上のモデルを選択しないと、純正タイプより制動力が落ちてしまいます。 これまでにWilwoodHDを装備した89~92の3rdカマロを何台かドライブしたことがありますが、制動力そのものはノーマルよりも劣っていました。
リアブレーキはをオーバーホールして、ライニングを貼り替え、ホイールシリンダーを交換しました。
エンジン


エンジンは試乗した感じでは調子が良かったのですが、左右のバンクに違うヘッドが取り付けられていたのと、内部をチェックしたかったので開けてみる事にしました。 ブロックは350ショートブロックです。
シリンダー、ピストンを含め、内部は比較的良好な状態でしたが、 念のためメインベアリング(親メタル)、ロッドベアリング(子メタル)、オイルポンプとポンプシャフトカラー、 左右で違う物が付いていたヘッドを後々のメインテナンスを考えて、交換しておくことにしました。
ターゲットマスターのヘッドを使用することにしたのですが、チャンバー容量が大きめだったので、圧縮比の落ちる分をガスケットで調整することにしました。
350の場合、通常ガスケットはコンプレッションボリュームが7.5~8.9ccくらいの物を使用しますが、今回は3.9ccのものを使用し圧縮比を補正しました。

あとはカム、プッシュロッド、ラッシュアジャスター、ロッカーアームを交換し、バルブ回りをチェックしヘッド関係は完了です。インテークマニフォールドには、EdelblockのToker2を、キャブレーターにはHollyの600バキュームセカンダリーをチョイスしました。
あとはエギゾーストマニフォールドですが、オーナーがパフォーマンスにこだわっていないのと、出来るだけメインテナンスの手間を省きたかったので、 ストックタイプの鋳物のマニフォールドを使用しました。
尚、へダースを取り付けた場合は、振動によって取り付けボルト類の緩みが発生しますので、定期的な増し締めが必要になります。 さらにへダースからの輻射熱でプラグワイヤー、フューエルライン等に影響がでる場合がありますので、それらを考慮した対策が必要でしょう。
特にV8OHVエンジンの場合は、プラグとエギゾーストポートの位置が非常に近いため、プラグワイヤーは熱害を受けやすく、熱に強いワイヤーの選択や、 被服処理、場合によっては遮熱板の取り付け等が必要になる場合があります。

また、高年式車の場合は、コンピューターやエレクトリックワイヤー類にも気を遣う必要が有りますので、特に性能にこだわる方以外にはへダースの取り付けはお勧めしません。
以前、95年式のZ28でノーマルマニフォールドと、アリゾナスピード製1-3/4径のへダースの性能比較をしたことがありますが、実際に違いが出てくるのは高回転域のみで、3800rpm以下ではほとんど差がありませんでした。 従って、M/T車やサーキット走行等ではメリットが出てくると思いますが、街乗りメインの車の場合は単なるファッションに終わってしまう可能性がありますので、コストとメインテナンス面等のデメリットを良く考えて選択する必要があります。

ラジエーターは、過酷な都内の渋滞をこなすために、コア増しをして冷却効率を上げて対処しました。
また、エアコンはオーバーホールをして、きちんと作動するようにしてあります。
トランスミッション
トランスミッションは、首都高を多用するということもあってオリジナルの2速パワーグライドから、オーバードライブ付きのTH700R4に換装することにしました。
R4用ミッションサポートを製作し、ミッションの全長が違う分を(R4の方が長い)、プロペラシャフトの長さを詰めて調整しました。
シフターはオリジナルのコラム式を活かしたかったので、リンケージ類を加工して、4速のR4のシフトを行えるようにしました。
これで首都高も快適に走ることができ、また燃費面でも有利になるでしょう。
リアエンド
リアエンドも一度下ろして、オーバーホール&内部をチェックしました。
インナーベアリングは問題有りませんでしたが、ホーシングのアウターベアリングとアウターシールが痛んでいたのでそれぞれ交換しました。

リング&ピニオンギアは、摩耗も無くまだまだ使える状態でしたので、そのまま使用することにしました。
ギア比は2.73:1です。 カバーガスケットを交換して組み直し、再調整しました。
サスペンション
フロントサスペンションアームは、サンドブラスとをかけ一度地肌を出した後再塗装しました。
その後ES製ウレタンブッシュを当たりを調整して取り付け、ボールジョイント、ステアリングのアイドラーアーム、ドラッグリンクも新しいものに入れ替えました。
リアには、Hotchis製のHDアームを使用し、こちらもブッシュ類は全てウレタン製です。
ウレタン製のブッシュを組み込む場合、ただ組み込むだけではなく、組んだ後に良く動きをチェックする必要があります。
場合によっては、再加工等をしてサスペンションアームが、ストローク全般に渡ってスムーズに動くようにしないと、音が出ることがあります。 組み付けの際には、水に強いリチウム系のグリースを使用してください。
普通のグリースは、水によって「乳化」と呼ばれる劣化が発生し、本来の潤滑機能を果たさなくなってしまいます。

スプリングは前後とも当社のHDスプリングを使用しました。 これで前後とも約1インチ下がります。
一般的にいろいろな路面を走らなければならない街乗りの車は、ある程度のストロークを確保する必要が有るため、ロワードする場合には-30mm前後が、 機能的に影響の出ない適当な範囲であると思います。

その車に必要なストロークは量は、車重とスプリングレートの関係で決まってしまいますので、 さらに下げたい場合は固いレートを選択する必要が有ります。
ショックは、あまり耐久性は無いのですが、街乗りで余り酷使しないため2~3年で交換するつもりで、今回はKYB製を使用しました。
作業終了!
その後、シート類を張り替えて作業は終了しました。
乗り心地も良く、トルクの有るエンジンは街乗りでもてとても快適です。
この状態で、オーナーに乗っていただいて様子を見ていただくことにしました。